和歌山県数学教育協議会
2018年第37回研究集会報告
2018年8月21日(火)、22日(水)
 於 : 和歌山県白浜温泉 「むろべ」
 
参加者は、少なかったですが、退職した深瀬先生の教具のお話と鹿児島の山本先生の小学校の実践のお話、2日目の校種別分科会と充実した内容の研究会でした。

【1日目】
全体会 「私の愛した教具たち〜楽しい教材教具で本質に迫る数学の授業を〜」 深瀬温子氏(元東牟婁中学校教員)

 
昨年度末で中学校を退職された深瀬先生が、現役時代に使った教具や授業についてお話しいただきました。数式分野では、「正負の数トランプ」「方程式てんびん」「べきタイル」「平方根の変身」「平方根トランプ」「連立方程式の絵問題」。関数分野では、「ブラックボックス」「ランドルト環による視力検査」「棒ばかり」「線香を燃やす実験」「カーテンレールの実験」。図形分野では、「球の表面積・体積」「三角形の合同」「相似な図形」「角知り器」「相似な立体の体積」「三平方の定理パズル、縄張り」。確率・統計分野では、「サイコロ」「くじ引き」「コイン投げ」等、教具にまつわる思い出を交えながら、教具の紹介、使い方、授業での工夫をわかりやすく話していただきました。生徒たちと楽しく授業をしている姿が目に浮かぶようでした。輪ゴムと押しピンを使った簡易拡大器でスヌーピーの絵を2倍に拡大する作業と実際に線香を燃やして行う1次関数の実験を参加者みんなで行いました。「先生、あの授業おもしろかったよ。」という子どもたちの声に支えられながら数学の教師を続けてきたという言葉が印象的でした。




記念講演 「本当の学力を高める算数の授業づくり」 山本忠義氏(九州地区数教協事務局長、鹿児島・小学校教員)
 学力テスト体制、能力主義、管理主義、学習指導要領の批判からはじまり、本当の学力をつけるための授業づくりの方法を、いろいろな実践を通じて話していただきました。まず、量分数と割合分数の違いをはっきりわからせ、量分数を中心に授業を進めていく授業について話されました。そんな量分数の授業の中で2回の互助実践をして、生徒を混乱させた失敗談も話していただきました。また、重さの授業では、「空気の重さ」や「水に溶けた塩の重さ」「水に浮かぶ木片の重さ」等について、子どもたちに議論させ、実験で確かめる授業実践についての話がありました。「見えない物を見る力」をつけさせたいという思いがあるそうです。また、4年の面積の授業では、周囲の長さと面積の関係を子ども同士が議論していく実践を紹介していただき、「議論し合って高め合っていく力」をつけさせたいと話されました。さらに、量を大切にした授業づくり、タイルを使った授業を通して「構造的にとらえる力」を身につけさせたいと話されました。最後に、本当の学力とは「納得と考える力」「構造的にとらえる力(科学的な視点)」「人に伝える力」「みんなで創り出す力」等だとまとめられました。



【楽しいものづくり〜算数・数学の教具・おもちゃ いろいろ〜】

 
覚道先生が「実物タイル」をもってきてくれどのように使うかをみんなで考えました。また、原啓司先生にミニミニブーメランを紹介してもらいました。そして、覚道先生にきらきらシャボン玉の作り方を教わり、作りました。
ナイター 真夏の夜の熱い算数・数学談義!】
 今年も、ビールを飲みながら、熱い教育談義が延々と続きました。


【小学校分科会】

「小学校中学年の分数指導」山野小・原啓司
 
「3分の1」とは、「1Lを3つに分けた1つ分」と「3つて1Lになるもの」の2通りの説明の仕方がある。原先生はペットボトルでつくった平均水槽
に1Lの水を入れ、3等分して1/3Lを説明しました。
また、教科書から抜け落ちている型として、「帯仮分数」の説明がありました。分数のいいところは1を自由に決められることだと話されました。

「タイルで学ぶたし算・ひき算」竜門小・覺道幸久
 
入門期の数(数との出会い)で大切なのは、集合づくりや1対1対応。数えることを知らなくても、数字が読めなくても、どちらが多いか、どちらが少ないか、同じかがわかります。
 5までの数を大事にしたいと思います。量として1から5までのタイルをとらえられるように。パッと見ていくつと言えるようになってほしい。次に「7は5と2」「5と4で9」など「5といくつで何」という見方を知ってほしい。本物タイルを使って自分で1から9までのタイルをつくることも大事であると参加者から発言があった。100のタイルを自分で作ることで、大きな数の重さも感じられます。また、両手取りボックスを使って頭の中に数・量のイメージを持たせる方法も紹介されました。くりあがりくりさがりもタイルを使うことで、イメージ化できます。空位の0がある3桁のくり下がりひき算もイメージがしやすい。306-129もタイルで考えるとわかりやすいです。十の位に9がどうして立つのかもよくわかります。



【中学校・高校分科会】

「完全数、その後」市立和歌山高(定)・山脇修一
 
約数の個数や約数の和を求める実践が報告されました。「エラトステネスの篩」によって素数を求める実践も報告されました。完全数をもとにした実践報告でした。
「今年の授業プリントから」  信愛高・和高専・原義則
 
まず、折り紙で三角定規を折る実践が紹介され、みんなで三角定規を降りました。授業では、三角比の授業で使っているそうです。また、平面図形やベクトルの授業でも折り紙で、重心・垂心・内心・外心をおって授業をしているそうです。和高専では、「場合の数」「順列・組合せ」「微分」を教えているそうです。高の教科書と単元構成はほぼ同じだそうですが、取り扱いはかなり違うそうです。例えば、数列の漸化式では、漸化式がどのようなものであるかを理解することが主題であり、特性方程式を解くととにより一般項を求める問題は例題になく、深入りはしないで、表計算ソフトのエクセルの式の表し方との関係をコンピュータ画面で確認したりするそうです。
「2項分布の教具」市立和歌山高・加納秀記
 ピンを打った板に、ビー玉を多数転がし、二項分布を確認する教具を作ってきて、実験してみせてくれました。
「文字式の作り方~中学校1年の文字と式」熊野川中・塩崎昌之
 「正負の数」「文字と式」の単元のなかで「演算決定」を「量の法則」に基づいて丁寧に扱う指導実践が紹介されました。
「加減」は同じ量(単位が同じもの)に使う。「乗除」は新しい量(別の単位になる)をつくるときに使います。また、「1あたり量」「土台量」「全体量」を導入し、乗除の意味を復習する。単位をつけて立式させることで、乗除先行とカッコの使用については、意味があり合理的な規則であることを確認します。その後、正負の数の指導をします。文字式の計算では、文章の中から量を単位をつけて取り出し、演算を決定しながら、式をつくっていきます。





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